僕は小さいころ本当にスポーツというものが苦手でした。かけっこは「ドベ」から数えたほうが早いほう、小学校では図書館に入りびたり怪人20面相やずっこけ三人組などを夢中になって読んでいた本の虫だったので、基本「運動神経がない」というのが僕の体力面での評価だったんですよね。でも、こうやって整骨院の先生になってトレーニングを教える立場になるといつも思うんです。
果たして、「運動神経がない」子なんているの? って。
もちろん解剖生理学的なお話をすると運動神経がない子なんていません。「運動神経がない」っていう言葉は運動が苦手な子を指すたとえみたいなものですよね。解剖生理学で「運動神経」というと、脳から身体を動かす信号を送る「末梢神経の中の遠心性神経」のことを指します。
そして、いわゆる「運動神経がいい」というのは身体を動かす信号がスムーズに働いてダイナミックにかつ滑らかに身体を動かすことができる状態。ボールが近くに来たと「認識」して、右足で蹴ろうと脳が「指令」をだして、大腿四頭筋や腸腰筋などの「主導筋を収縮」させると同時に、ハムストリングスなどの「拮抗筋を弛緩」させて、ちょうどいいタイミングでボールを蹴る、その動作が上手に行えるほど「運動神経がいい子」というわけですね。
それでは、「運動神経の働きが弱い子」というのは一生運動ができないままなのでしょうか? もちろん答えはNO! 上に書いた「主導筋を収縮しながら拮抗筋を弛緩させる」動作を繰り返すうちに身体の動きはどんどんよくなり、それを継続するとスポーツでの動きも上達することができるんです。
「主導筋を収縮しながら拮抗筋を弛緩させる」なんて難しい言い方をしてしまったのですが、例えば一般的な筋肉トレーニングの話。初めて腕立て伏せをした子は最初はすぐに身体が疲れてしまうですが、1週間もすれば自分でも実感できるほど以前より楽に腕立てすることができるようになってるんです。これはたった1週間で筋肉が肥大してるわけではなく、トレーニングを繰り返す中で、脳から運動神経を介しての「主導筋を収縮しながら拮抗筋を弛緩させる」動作が上手に行えるようになったからなんです。
要は「身体の使い方がわかってきた」ということですね! 「運動神経が悪い子」というのは本当にできないわけではなく、今まで身体を上手に使うことができなかっただけ、諦めるにはまだ早いのです。そういう子供がスポーツに楽しんで接するには「あなたは運動神経がないから」と決めつけないことが一番大事! もし、運動が苦手な子供に出会ったら運動神経がないからと違う趣味を進めるよりも「まだスポーツの経験が少ないだけだから、焦らず少しずつ頑張ってみよう」と応援してあげてください。
きっと、その一言が子供をスポーツに前向きにして「運動神経をよくする」きっかけをくれます。子供の可能性は無限。それを信じて、長い目で応援してあげてくださいね。
参考文献:山海堂 勝ちに行くスポーツ生理学