整骨院で施術をしていて、病院から退院されたばかりの年配の患者さまが「足がふらふらするから、転ばないようにだけは必死に気を付けているのよ」と話されたことがあります。足の筋肉は本当に衰えやすいもので、少し歩く時間が減るだけでもいつの間にか筋肉が細くなってしまう。身体を支えられなくてつい転倒したら大怪我で寝たきりなんてこと、絶対に避けたいですよね!
今日はそんな「転倒予防」についてお話します。
高齢による身体の衰えからくる「転倒の危険性」
疾病によらない身体機能に関連した転倒の危険因子は、いずれも加齢(老化)に伴う機能減衰に基づくものです。反応時間の遅延、筋力低下、バランス機能低下、起居動作能力の低下、視聴覚機能低下や深部知覚低下などの感覚障害、そして歩行機能低下などです。
(転倒予防の知識と実践プログラム 日本看護協会出版) より
整骨院で患者さまと接していて感じることなんですけど、現代の高齢な方って本当に元気でアクティブなんですよね。地域でもステップ運動やグランドゴルフ、楽器や習字など習い事や趣味を楽しまれている方は本当に多く見た目でも「高齢者」と呼んでしまうには恐れ多いほどに若々しい方ばかり。病は気からと昔から申しますが、気持ちだけでいえば今の年配の方は全然衰えを感じさせないんですよねー。
それではどうして転倒するのか?というと、臨床上で一番気になるのが「足の細さ」。どんなにふくよかな方でもお尻から太ももの筋肉がついてないことが多く、歩行時に自分が思ってるよりも足が上がってないんですよね。そのせいで、小さな段差でも躓いて転倒するなんてことに!
下肢の筋力が低下することによってお出かけしても疲れやすくなり、疲れるから歩きたくない、歩かないから余計に疲れると運動不足の悪循環が起きてしまいます。高齢者の転倒予防にはまず「筋力をつける」ことが大事になるのです。
ウォーキングで筋力は増えるのか?
年配の方に運動を勧めるとき一番お手軽に始められるものは「ウォーキング」。道具もいらない、技術も必要ない、からだひとつで今日からでも始められる。全身の筋肉をほどよく使い、心肺機能も鍛えられる、歩くことによりバランス機能の維持も期待できると、転倒予防のためにまずウォーキングからって選択は私もすごくいいと思います!
でも、ウォーキングだけでいいのか?というと私は疑問だったりするのです。正直、筋力って歩いてるだけではそこまで劇的に増えないんですよねー。筋力が効率よく増える条件として10RM程度の運動、良質なたんぱく質などの栄養の摂取、適度な休息があげられます。年配の方に最初から10RMは辛いのですが、転倒予防のため筋力を増やすことを目的にするのなら少し重いかなって思う程度の負荷をかけた運動が欲しいんです。
理想は、ウォーキングと軽いウェイトトレーニングを半々の気持ちで。おうちで鍛えるのなら100均に売ってる1kg~2kgの重りを足につけてゆっくり上げ下げすることから始めてもいいと思います。1時間歩き続けるより30分歩いて5分間おうちで軽いトレーニングをするほうがより転倒を予防することができますよ。
杖や押し車などの転倒予防の道具を積極的に使う
転倒する原因のひとつに「転倒の既往」があります。ようは一度転倒した人はまた転倒しやすいっていうことで。「そりゃそうだろ」って思われる方もいそうですが、意外にこれに気が付かない方って多いんですよ。転倒の原因って上に書いた筋力低下や歩行機能の低下だけでなく、ほんとうに様々な要因が重なって起きてしまい、その原因をひとつひとつ解決しない限りは「もう一度転ぶ」可能性は否定できません。
さてどうしましょう。ここで私は「杖や押し車など転倒しにくい道具を積極的に使う」ことをオススメします。いや、わかってます「杖とか使うほど体力落ちてない」って言われるんですよね? 杖って自分で必要って思わない限りは持ち歩くことに抵抗を感じられる方ほんと多いんですよねー。でも「3点は1面を決定する」と言われ、安定性では杖のあるなしでは段違いなんです!
もしあなたやあなたのご家族が「半年以内に複数回転倒している」場合、杖や押し車、歩行具などの転倒予防ができる器具を使うことを検討してみると、今後起きるかもしれない大怪我をさける可能性がぐんっと上がります。昔から「転ばぬ先の杖」っていいますし! もし転倒しそうだなーって不安に感じてきたら杖なども恥ずかしがらず使ってみてください。
参考文献:転倒予防の知識と実践プログラム 日本看護協会出版
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