「ヘルニア」という言葉を一度は聞いたことありますよね。テレビの芸能人が悩まされていたり、実際に自分や家族が「ヘルニア」になったりと身近に感じる方もいるのではないでしょうか?この「ヘルニア」、本来あるべき場所から脱出する、突出するという意味があります。
もちろん、同じ「ヘルニア」という言葉でも、脱出する、突出する場所によって症状もさまざま。腰椎や頸椎の椎間板ヘルニア、いわゆる脱腸のことを指す鼠径ヘルニア、実は脳ヘルニアという疾患もあります。今日はそんな「ヘルニア」の中でも、「頸椎の椎間板ヘルニア」についてお話していきたいと思います。
頸椎椎間板ヘルニアとは
人間の首の骨は7個の頸椎からできていて、それぞれの骨と骨の間には椎間板という軟骨がクッション材として存在しています。この椎間板は加齢などにより壊れやすくなってしまうのですが、実際に壊れて中にある脊髄や神経を圧迫することによって起きる疾患を「頸椎椎間板ヘルニア」といいます。頸椎椎間板ヘルニアは30~50歳の男性に多く、C5/C6、C6/C7、C4/C5の順番で発症しやすいという特徴があります。
原因
頸椎椎間板ヘルニアの原因は、加齢や運動からの負荷、または遺伝などとも言われてるそうです。一つの原因から起きるわけではなく、上記の原因が絡まりあってきっかけになり発症します。
症状
頸椎ヘルニアの症状として頭部から頸部、肩や背中にかけてのこわばりや不快感、疼痛や痛みによる可動域の制限などがあります。首を後ろに倒すことにより症状が強くなり、肩から背中、うでにかけての放散痛や手のしびれや感覚障害もあらわれます。しびれや放散痛は通常右か左の片方のみにあることが多いのですが、まれに左右両方に感じることがあります。
また、症状が重篤になると上肢だけでなく、下肢にもしびれや感覚障害が出てきて、手先の動かしにくさや排尿不全などもあらわれてきます。
検査と診断
X線やMR、脊髄造影などによって診断されます。臨床の所見と画像診断で同じ高さの神経の障害を疑われた場合に医師によって確定診断とされるようです。また、手根管症候群、肘部管症候群などの上肢の神経の圧迫に起きる症状や、肩部に激しい痛みを感じる肩関節周囲炎、脊髄や脊椎、神経にできる腫瘍との鑑別診断が必要になるみたいです。
頸椎椎間板ヘルニアの治療法
上肢への放散痛が主の症状には基本的に保存療法(頸椎カラーで患部の安静を保つ、頸椎の牽引を行う、手技によるマッサージなど)が用いられます。頸椎椎間板ヘルニアの8~9割は保存療法でよくなると言われています。また、激痛が起きて3週間ほどまでは患部を安静に保つようにされてください。
もし症状が下肢にもあらわれて歩行困難、排尿障害や手先の動かしにくさなどから生活が困難な場合は医師の診断から手術治療の対象になるようです。手術では損傷した椎間板を取り除き、上下の椎体を固定するために骨移植を行う術式が一般に行われるみたいです。
頸椎椎間板ヘルニア、日常生活で気を付けること
頸椎は上を向いて伸展するときに椎間板などに負担がかかります。症状が軽くなったあともなるだけ上を見上げるような動きは避けるようにしましょう。日常から背筋を伸ばして顎を引くようにすると頸椎にかかる負担を減らすことができますので、よかったら試してみてください。
引用・参考
医学書院 標準整形外科学
日本放送出版協会 これだけは知っておきたい 肩・腰・ひざの痛み
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